[………]
:
[………]
:
[………]
:
[………] : 作戦を説明する。
[………] : 依頼主はアリアンロッド艦隊。
[………] : 特A級のお尋ね者、鉄華団・団長『オルガ・イツカ』。
[………] : その所在がこの近くである事が判明した。
[………]
:
作戦内訳は、そのオルガ・イツカの暗殺。
手段は問わない、との事だ
[………] : ……と、ここまでがアリアンロッド艦隊の依頼文だ。
[………] : 本題は此処からだ。
[………] : 雇い主はクリュセ自治区。
[………] : 火星の希望と言えるオルガ・イツカを殺されては困る、外部からの依頼だ。
[………]
:
依頼内容は、オルガ・イツカを狙う可能性のあるその全ての暗殺。
トータル・バウンティはオルガ・イツカ本人にかけられた金を軽く超える。
[………] : 鉄華団を敵に回すか、多い敵をプチプチ潰すか、ってところか。
[………]
:
依頼主からのリストも上がっている。
有効活用しろ。
[………] : こんなところか。
[………] : 悪い話ではないと思うぜ。連絡を待っている。
[………]
オルガ :
[………] オルガ : ホームセンターが見える、建物の中。
[………] オルガ : 「……一番近いのはあの人」
[………] オルガ : 彼女の感覚は、くっきりとホームセンターに戻った三人を捉える。
[………] オルガ : ゆっくりと、得物を構えて。
[………] オルガ : 「一撃で。確実に。私なら」
[………] オルガ : 引き金、を。
[………] オルガ : 「ミスショット……?」
[………] オルガ : 「……っ、ち、違うっ、叩き落としたんだ、私がしくじったわけじゃない」
[………] オルガ : もう一発、また構える。
[………] オルガ : 「場所は割れてない。次射で仕留める」
[………] オルガ : ゆっくりと照準を合わせて
[………] オルガ : 二撃目、火が走る
[………]
オルガ :
「魔術的現象を確認、想定内ではある……」
「……だけど少し不味いかもしれない」
[………] : 辺りの魔力が一気に励起する
[………] オルガ : 「……しまった、出来る」
[………] : 黒い雷のような物が走り
[………] : 生きている存在を麻痺させる
[………] オルガ : 「は……くあ……っ」
[………]
オルガ :
それを受けて、脱力。
乗り出していた窓から、落下する
[………] : 落ちる体を魔神の柱が受け止める
[………] オルガ : 「……っあ、バルバトス」
[………] オルガ : 「私を……助けたつもり?」
[………] : 答える事は無い
[………] : ただ、受け止めた体をゆっくり降ろして消える
[………] オルガ : 「っあ」
[………] オルガ : 「……」
[………] オルガ : 先程のそれを見て、この場に居ない誰かを思い出す。
[………] オルガ : 「三日月、さん」
[………] オルガ : 奇しくもそれは、今の友と同じで、だけど違う、誰かの名で
[………] 三日月(艦これ) :
[………] 三日月(艦これ) : 「……」
[………] 三日月(艦これ) : 「…何してるんです、オルガさん?」
[………] オルガ : 「……あ、三日月」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……三日月も、いる」
[………] オルガ : 「二人、とも」
[………] オルガ : まるで、彼女達と同じで、違う名を呼んだせいで、引き寄せてしまったかのようで。
[………] 三日月(艦これ) : 「もう一度聞きます」
[………] 三日月(艦これ) : 「『何してるんですか?』」
[………] オルガ : 何処か、泳いだような目で
[………] オルガ : 「……仕事」
[………] 三日月(艦これ) : 「今日は、バレンタインの準備をする日でしたよね?」
[………] 三日月(艦これ) : 「後で来るって言ってましたけど…」
[………] 三日月(艦これ) : 「仕事はまだ終わってないんですか?」
[………] オルガ : 「……バレンタイン。そうですね。私の好きな人、知っていますか?」
[………] 三日月(アズールレーン) : ふるふると首を振る。
[………] 三日月(艦これ) : ぎゅっと三日月の手を握る。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……ん」
[………]
三日月(艦これ) :
「どなたでしょうか?」
警戒を一段階上げる。
[………]
オルガ :
「……前も言いましたけど、私家には、上の兄弟姉妹が何人も居るんです」
「一応、人並みの家族愛は抱いてるつもりで」
[………] 三日月(艦これ) : 「続けてください」
[………] オルガ : 「……私の何個か上のお兄さん、次男の名前は」
[………] オルガ : 「オルガ・イツカ」
[………] 三日月(艦これ) : 「…オルガ・イツカ」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……?」
[………]
オルガ :
「火星のPMC、鉄華団の団長。多分、有名人ではあると思います」
「良くも悪くも」
[………] 三日月(艦これ) : 「…随分な人なんでしょうね」
[………] オルガ : 「……勿論、敵だって多い人で、だから」
[………] 三日月(艦これ) : 「狙われていた、と?」
[………] オルガ : 「はい。私が、兄さんにあげられるプレゼント、一番なのは」
[………] オルガ : 「……兄さんの身の安全、しか思いつかなくて」
[………] 三日月(艦これ) : 「…それで武器を」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……その敵は、どこにいるの?」
[………] オルガ : 「ははは……言ったら軽蔑するでしょう?」
[………] 三日月(艦これ) : 「…三日月」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……」
[………] 三日月(艦これ) : 「きっとその敵は…」
[………] 三日月(艦これ) : 「こいつら、何じゃないですか?」
[………] 三日月(艦これ) : 黒服を突き出す。
[………] オルガ : 「え」
[………] オルガ : 「え、いや、私は、私は……」
[………] 三日月(艦これ) : 「ついさっき火薬の匂いがしたので」
[………]
三日月(アズールレーン) :
「……?」
じぃ…とオルガを見つめる。
[………] オルガ : 頭を、抱える。
[………] 三日月(艦これ) : 「私と三日月の平穏を脅かすものだと見做しました」
[………]
オルガ :
もっと、実行犯として考えられる者が居た。
なのに、私は、私はそれに気付く素振りすら見せず、手近なところからなんて、最低な理由で。
[………]
オルガ :
「……」
自分を、恨む。
[………] オルガ : 「三日月。取り敢えずは、ありがとう、ございます」
[………] 三日月(艦これ) : 「…ですが」
[………] 三日月(艦これ) : 「いくら友達だからといってもそのような形で銃を持つ人は」
[………] 三日月(艦これ) : 「私たちに敵意を示す可能性があります」
[………] 三日月(艦これ) : 「その点はどう思っていますか?」
[………] オルガ : 「あ……はは……」
[………] オルガ : 「いえ、もう」
[………] オルガ : 「“貴方達”に敵意を示す、というなら、もう」
[………] 三日月(艦これ) : 「もう?」
[………]
三日月(アズールレーン) :
「……」
ぱちぱちと瞬く。
[………] オルガ : 「もう私は、取り返しの付かないところまで行きました」
[………] 三日月(艦これ) : 「……」
[………] オルガ : 「明確な殺意を、向けてしまった」
[………] 三日月(艦これ) : 「…顔向けできない、と」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……じゃあ」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……オルガも、作ることなの。ごめんなさいのチョコ」
[………] オルガ : 「ごめんなさいの、チョコ」
[………] 三日月(艦これ) : 三日月の手を優しく、また握る。
[………]
三日月(アズールレーン) :
「うん」
握られた手を、きゅっと握り返す。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「つくったチョコは、だいじなきもち、つたえられるの」
[………]
オルガ :
自分を、思い出す。
思い返せば、そんな心当たりは、短い自分の人生の中にも、無数に
[………] 三日月(艦これ) : 「殺意を向けられるなら」
[………] 三日月(艦これ) : 「きっと謝意も、好意も向けられるはずです」
[………] 三日月(艦これ) : 「だってそのために…」
[………] オルガ : 「……」
[………] 三日月(艦これ) : 「誰かに何かをあげる日の準備をしているのでしょう?」
[………] オルガ : 「まあ、はい」
[………] 三日月(艦これ) : 「だから」
[………] 三日月(艦これ) : 「一緒にチョコ作りましょう?」
[………] 三日月(アズールレーン) : こくん。
[………] オルガ : 「……はい」
[………] 三日月(艦これ) : 「ちょうど私も、もう一度とびっきりのチョコを作らないといけないんです」
[………] 三日月(艦これ) : ね。
[………] オルガ : 「こんな私を、もう一度仲間に入れてくれるなら」
[………] 三日月(アズールレーン) : ふる、と三日月を見上げる。
[………] 三日月(艦これ) : 見上げる顔に頷いて。
[………] 三日月(艦これ) : 手を差し出す。
[………] オルガ : 「はい、行きましょう。三日月……!」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「ん。……いっとくけど、たいへんだよ」
[………] 三日月(アズールレーン) : にこりと。
[………] 三日月(艦これ) : 「はい…。」
[………] 三日月(艦これ) : 「じゃあ、帰りましょうか」
[………] 三日月(艦これ) : 「……山城さん、待ってますし」
[………] オルガ : 「……ああ。」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「そうだった。いそがなきゃ」
[………] 三日月(艦これ) :
[………] 三日月(艦これ) :
[………] 三日月(艦これ) : 後ろ手にものを抱えて。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……」
[………] 三日月(アズールレーン) : 正面からじっと。
[………] 三日月(艦これ) : 「はい、これ…」
[………] 三日月(艦これ) : 「ごめんなさい、とこれからもよろしくお願いしますと…」
[………] 三日月(艦これ) : 「その他諸々の意味を込めて」
[………] 三日月(艦これ) : 「私の『大切な人』に」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……!」
[………] 三日月(艦これ) : その手には、色とりどりのマカロンが。
[………] 三日月(艦これ) : 「山城さんの本に書いてあった通りだね」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「マカロン…たいせつなひと」
[………] 三日月(艦これ) : 「どうぞ、受け取ってください」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……」
[………] 三日月(アズールレーン) : にこり。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「ありがと。とってもうれしい」
[………] 三日月(艦これ) : 「それなら…よかった」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「じゃあ、三日月からも……これ」
[………] 三日月(艦これ) : 「…!」
[………] 三日月(アズールレーン) : ごそごそと。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「ん……三日月のほど、うまくできなかったかもしれないけど」
[………] 三日月(アズールレーン) : ちょこんと、小さくまとまったマカロンが。
[………] 三日月(艦これ) : 「三日月の…マカロン」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「うん。……ほんとはね」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「さいしょから、三日月に……わたしたくて。……でも、ひみつにしたかったから」
[………] 三日月(艦これ) : 「…すっごく、嬉しいよ」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……!」
[………] 三日月(艦これ) : 一口、かじり
[………] 三日月(艦これ) : 「今まで食べた中で、一番おいしい」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……ほんとに?」
[………] 三日月(艦これ) : 「ほんとう」
[………] 三日月(アズールレーン) : 目をきらきらとさせながら。
[………] 三日月(艦これ) : 「来年も、再来年も、その先も一緒に作っていこうね」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「うん。……でも、その前に」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「三日月の手で、三日月に…ちょうだいって、いってもいい?」
[………] 三日月(アズールレーン) : そう言って、口を大きく開き。
[………] 三日月(艦これ) : 「…あーん」
[………] 三日月(艦これ) : マカロンを優しく放る。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「あー」
[………] 三日月(アズールレーン) : あむ。
[………] 三日月(艦これ) : 「……」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……これが、マカロン」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「……三日月のいちばんすきなたべもの、かえとかなきゃ」
[………] 三日月(艦これ) : 「ふふ、…ありがとね」
[………] 三日月(艦これ) : 私と同じ名前の。
[………] 三日月(艦これ) : 「三日月」
[………] 三日月(アズールレーン) : 「うん。ずっといっしょ」
[………]
三日月(アズールレーン) :
すき
特別だから。
[………] 三日月(アズールレーン) : 「三日月」
[………] 三日月(艦これ) : 2人を見つめるように、細長い月が空に茫漠と漂っていた。
[………]
三日月(アズールレーン) :
[………] 三日月(艦これ) :
[………] 三日月(艦これ) :
[………] 三日月(艦これ) :